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「はあ?ボンゴレアジトに幽霊が出る?きっぱりとお前の仕業だろ骸」
胡散臭い情報と、それ以上に胡散臭い情報源にツナが突っ込みをいれたのは、麗らかな昼下がりだ。
隣にいるのは霧2人。
これがクロームだけだったら癒しタイムになるはずだったその時間も、もう1人いるへたつきの霧のおかげでなんだかとっても癒されない。いやどっちもへたはついてるけれども。
そんなわけでフラストレーション満載なツナである。
「変な幻覚野放しにするなよ。出したらちゃんと消しておけ」
骸のせいでいまいちおいしく感じないジェラートにスプーンを突き立てながら、感情を伴わない声で告げる。
本日のおやつは獄寺君のセレクトで、町で一番人気のジェラート屋のものだ。
ちなみにツナは抹茶で霧2人はチョコレート味だ。
獄寺君のセレクトはいつも完璧で、いつだってツナの好みを外さない。
だというのに、今日は全くおいしく感じられない。
おいしいものをおいしく食べられないってなんか哀しい。ごめんね獄寺君、とこっそり謝ってみたりする。
ふとクロームと目が合った。あ。少し口の中においしさが戻ってきた。
ほっとする。クロームは現在ダイエット中とかで、骸に半分を分けてしまい、残った半分をゆっくり口に運んでいる。
目が合ったら、少し笑って首を傾げてくれた。
どうしたの?ボス、って視線で聞いてくる。
クロームは優しい。可愛い。それだけでまだまだお父さんがんばるからね、といいたくなるツナの、癒しの時間をぶち破ったのは、やはりもう1人の霧だけれども。
「違います!僕が被害者なんです!どうして君はいつもいつもなにかあると僕を疑うんですか!」
ツナが骸を視界から排除して癒されている間に、脅威のスピードで1.5人分のチョコ味のジェラートを片付けていたらしいチョコレート狂はさっきの話題をまだ引きずるつもりらしかった。
「なに?まだその話続くの?」
げんなりとツナは問う。
だいたいにおいて、骸が被害者?おこがましい!
そもそも被害者という言葉がこうも似合わない男もいない。
「大体、幻覚とか幽霊とかはお前の得意分野だろ?」
オレ、いまいち有幻覚と生霊の違いがわからないんだよね、と呟いてみる。
骸はそんなわれらがボスに落胆するように首を振った。
「違います。幻覚と純粋な心霊現象は別物ですよ!」
ふ-んと、気のない口調で呟きながら、ツナはジェラートの最後の一口を食べきってスプーンをおいた。
そのタイミングを待っていたわけでもないだろうが、ボス、と癒されるほうの霧が控えめに声をかけてくる。
「違うの。あれは骸様じゃないわ。私も怖かったの」
「・・・・クロームが言うなら本当なのかな」
少し考えて、まだ多少疑いの視線は残したままツナは言った。
隻眼の少女は真剣だが、彼女の1番は骸なだけに油断はできない。
骸を伺う。お前嘘つかせてないよなと視線に力を込める。
骸はそれをツナが話を聞いてくれる気になったと勘違いしたようだった。
どこかうれしげに被害状況を説明し始める。
「扉が勝手に閉まったんです!」
骸が告げる。クロームがこくこくと頷く。
「そりゃ自動ドアだもん。閉まるよ」
対するツナはどこまでもクールだ。
「まだ作ってる途中ですから電気通ってませんボンゴレ!」
突っ込みを入れる骸はどこまでも熱い。
房を逆立たせて突っ込む骸に、ツナは冷ややかな視線を投げた。
問いかける。
「で、お前はその完成してない地下施設に何の用だったんだよ」
「クフ」
「そういえば隣のヒバリさんとこは完成してるんだったよな」
「クハ」
「笑ってごまかそうとするなよ。無理があるから。あとヒバリさんとこに何かしたらおしおきだからな」
というかオレが間違いなくヒバリさんから襲撃を受ける。
そしたら容赦なく骸を突き出そう。そのために骸の身柄は確保しておかなければ。
きらりと目を光らせてグローブを装着し始めるツナである。
それをどこか憂うような瞳で骸は見つめた。これ見よがしに嘆息してくる。
「・・・・そのおしおき内容を聞いても?」
「炭と氷像どっちがいい?」
「2択?!その2択ですか?!」
「焼きなっぽーよりやっぱ夏は涼しく氷かな」
「つ、綱吉くん?」
「でもな。入ってるのが骸じゃ精神的に涼しくないもんな。やっぱり焼くか」
「・・・・」
「というわけで骸。希望する焼け具合を申告しながら前に出ろ。希望にかかわらず炭になるまで燃やしてやる」
淡々と告げるツナは本気だ。骸は顔を引きつらせた。
「性格変わり果てましたね・・・・綱吉君」
「そりゃお前みたいなのがいるからな。お父さんも少しは強くならないとやってられないよ」
だってオレはファミリーのボスなのだ。ボスなんだから。ボスはみんなのお父さんなんだもん。
冗談のようにそういいながら、ナッツまで出したツナは本気だ。
ナッツは出てきたとたん、細い腕に抱きすくめられた。クロームだ。
クロームがナッツの毛並みに頬擦りし、ナッツはうれしそうにごろごろ鳴く。
あ。また癒しの光景が。少しツナは毒気を抜かれる。
だからといって油断したわけでもなかったが。
クロームがナッツの顎の下を撫でてやりながら言ってくる。
「あのね、ボス。私見たの。階段の上で人形が笑ってたの・・・・」
「そういう顔の人形なんじゃないの?」
「では聞きますがね。なんで未使用のアジトに人形が落ちてるんですか?」
「うーん?そういやなんでだろう」
確かにそれは説明が付かない。ツナが首を傾げる。
「それに突然床が抜け落ちたりもしたんですよ」
「まだ完成してないからだろ?」
まだできてもないもの壊すなよな、と視線を鋭くするツナの言葉を遮るように、骸は叫んだ。
「とにかくいろいろすごかったんです!」
あっそう、と綱吉の返事は棒読みだ。視線は冷たい。グローブは装着済み。
ナッツは・・・・クロームにじゃれついているが。
「それで?」
言いたいことはそれだけか?とツナが言外に告げる。
炎のともる寸前。
「幽霊ごときに馬鹿にされては、術士の沽券にかかわります!だから綱吉君も見に行きませんか?!」
がっしりとツナの手を握っての骸の訴えは、生ぬるい視線に流される。
「幽霊の仕業と決まったわけでもないし。別にオレは馬鹿にされてないし」
「何でそんなにドライなんですか!もっと熱くいきましょうよ!夏なんですし!」
骸の訴えはどこまでも暑苦しい。暑苦しいったらない。
うんざりと告げる。
「結局、あれだろ。お前だけ怖い思いしたのが嫌だったんだろ?」
そして今この場でボコにされるのも嫌なんだろう。
「そこまでわかってて来てくれないんですか?!」
「だってお前のプロデュースかもしれないし」
そもそもが疑わしいのだ。
骸が痛いほどの力を込めて手を握ってくる。
こういうところ骸はランボみたい。どちらにとっても失礼なことを考えてみた。
でもこういうときの骸は多分嘘はついていなくて、本当に本気で多分言ってる。
だから燃やせない。嘘だとわかる何かがあれば、軽く3日くらい氷漬けにしてボンゴレ玄関に飾ってやるんだけど。
嘆息した。
それはもう骸を疑ってのものではなかったが。骸にはそう映ったらしい。
「いつからこんなに疑り深い子になったんですか!僕はそんな風に君を育てた覚えはありませんよ!」
・・・・支離滅裂なことを言ってくる。
お前に育てられてないからな、というお決まりの突っ込みをするのさえ面倒で、もうひとつ溜息した。
「はいはい。さて、息抜きはおしまい。邪魔すんなよ」
お父さんおやつタイム終了だから。仕事に戻るね、とクロームにいうと、彼女はがんばってねボス、と笑ってくれた。
「ちょっと!待ってくださいよ!」
骸は手を離さない。離さないから、そのままずるずると引きずっていく羽目にはなる。
「あー、幽霊?いくら夏だからって、骸、そのネタあんまりおもしろくない」
さらりと告げても手は離してもらえない。
ずるずる引きずる。重いしとっても迷惑だ。
「ネタじゃないですよ!」
引きずられながら骸が訴え、クロームは困ったような視線でツナに訴えかけてくる。
「ボス・・・・」
仕方ないな、とツナはしぶしぶ骸を振り返った。
「わかったよ。1回みんなで行ってみよう」
「久しぶりだな並盛」
呟いてみる。できることなら一人で帰ってきたかったが、今それは言うまい。
とりあえず、里帰りなのだ。
ヒバリさんとこにショバ代もきちんと払っているし、さっき羊羹を持って挨拶にもいった。
草壁さんしかいなくてラッキーなんて思ったことは取り合えず秘密だ。
それよりは積極的に、里帰りの日にち調整をヒバリさん不在と思われる日時に設定したことはもっと秘密だ。
もっとも神出鬼没な上に時々は超直感をしのぐほどの野性の勘を持ったヒバリさんが相手だから、それも賭けに近かったけどね、と賭けの勝者の笑みでツナは自分の危険回避超直感を自画自賛する。
なにしろこちらには骸がいる。
デーチモの守護者の中でも際立って仲が悪く、2人が顔を合わせた場にいた人間は不幸だとボンゴレ内ではもはや1級レベルの回避事項だ。
2人が顔をあわせれば何が起こるかなどわかりきっているし、そんなことでせっかくの里帰りの日々を怪我で過ごすこともあるまい。
とりあえずは第一段階はクリア、と胸を撫でおろすツナだ。
霧のリングで幻覚の景色を潜り抜けると、無機質な金属製の扉が見えてくる。
特に骸のいうような何か恐ろしげな気配を漂わせるでもなく、それはひっそりと存在した。
「入り口だけ見ると結構いいかんじじゃない?」
「いきますよ。何があるかわかりませんから、気をつけてください」
神妙な顔で骸が言う。
ちなみにハッチはまだ電気が引かれていないため手動だ。
「でもだっさい話っスよね。術士が怖がるなんて」
はん、と小馬鹿にする視線で獄寺が言う。
「そうだな」
「ははっ、まあいいじゃねえか。そのおかげでオレたちも視察にこれたんだから」
お兄さんが同意し、山本は、いつもどおりにさわやか元気だ。
気にすんな、といいながらも、骸の神経を逆なでしているようにしか見えない。
「びっくり系は苦手なんですよ!」
負けじと言い返す骸に、まーまーまーまーと山本は宥めにはいる。
それを横目に眺めながら、ツナは隣に立つ獄寺について、少々問いただしたい点を見出していた。
「獄寺君はなんでそんなに重装備?」
獄寺は美丈夫だ。見た目だけでいうなら、見目麗しいデーチモファミリーの中でも見劣りしない美青年ぶりだ。
見た目がいいって得だなとツナは思ったりするが。
今日はなにやら見た目のよさだけではカバーしきれないあれこれが。
今日の獄寺も顔だけはすばらしく、スーツもいつもどおりに文句なしに似合っている。が。
一眼レフのデジカメを2つ首から提げ、双眼鏡も首から下げ、なぜか虫取り網を持った姿が全てを台無しにしていた。
獄寺は親愛なる十代目からの質問に朗らかに答える。
「世界の七不思議に遭遇するチャンスですから!」
この人実はめちゃくちゃ楽しみにしてる。
ツナ、心のつっこみである。
それを口にすることはなく、ツナの視線がなにか生暖かいものを湛えた。
「・・・・そう。よかったね」
肝試しの話前編です。
後編も夏のうちにあげたいけど、たぶん秋になると思います。
おざんぷ様。
新章はアルコバレーノ編なんでしょうか。
ついに最終章なんでしょうか。
今までもアルコバレーノに全ての謎が終結している感じでしたし。
まだまだ読みたいので、終わらないで欲しいですが。
来月はテストもあるし模試もあるし実習もあるけど書きたいです。
ツイッタはじめたら少しだけ楽しくなってきました。